ペット業界の表と裏 繁殖犬と個体数のお話
流通の裏側
例えば、映画やCMなどで特定の犬種に人気が出たとします。店頭での売れ行きが多くなり、問い合わせや注文が増えたとします。その時期、実はその犬種の流通は停滞してしまいます。在庫不足がおきるのです。
なぜなら、生まれた子犬を繁殖用に抱えてしまうため、流通しないからです。
もしくは、業者同士での売買に回されるため、一般の小売りする数は格段に少なくなります。ペットショップで犬や猫を購入したことがある方は経験があるかもしれませんが、流行の犬種・猫種はメスの方が格段に値段が高く、探すのも大変です。その子一頭を高値で売るより産ませて子供を売った方が子供の数に比例して利益を上げる事が出来るからです。需要は間違いなくあるわけですからね。
不自然な生産
ブリーダーは本来、得意とする犬種の繁殖が目的なので、利益目的の他犬種は少数しか持たないか、もしくは全く扱わないかなのですが、これが繁殖屋になると覿面にその傾向が強く反映されます。自分のとこで生まれた子犬を使ってさらに子供を作る。
繁殖屋は、代メスはたくさん持ちますが、維持費がかかるんで種オスは数匹しか持ちません。犬種によってはオスは持たずに仲間内での交配で子供を作ります。
手近な種はと言うと、下手をすると父親や兄弟だったりするわけで・・。ちょっと考えるとわかりますよね、遺伝的に弱い個体が大量に生み出される事になります。奇形・遺伝疾患・免疫力低下・発育不全などで、早期に命を落とす子も多いです。これらの症状は現在、動物病院で診断される病気としてメジャーなものばかりです。
“生産する”のメカニズム
通常メス犬は、生後7~12ヶ月位で最初の発情(ヒート)が来ます。その後半年周期でヒートが繰り返され、年に2回子供を産める体になります。前述した、繁殖屋で生まれて残されたメスの子供たち、ヒートが来るたびに交配され、子供を産む事だけに従事させられてしまう運命に陥ってしまいます。最悪の場合、子供を身ごもるか育てている時期以外は命としてすら扱ってもらえない子達も実在しています。
ブリーディングの常識(獣医学的・動物福祉的に考えて)としては、初産は2回目のヒート以降。出産から次の出産までは母犬の体調を考えて一年以上あける事が望ましいと考えます。子供と親を離す時期も、理想は3カ月以上と考えられております。これが繁殖屋になると、お構いなしにとにかく効率的に生まれるだけ産ませる。生まれた子供は死なないうちにお金に換える。が常識になってしまうのです。
進む効率化
当然流行はいつか終わります。生まれた子供に値段がつかなくなると、今度は繁殖ラインの効率化が行われます。効率的に利益を上げる為には、売れる犬種を前面に出し、売れないものは処分と・・労力と経費を効率化する為に、がんばって増やした親たちを減らす事が始まります。
どんな方法で??そう、みなさんご存知のような方法を身銭を切らずに血税を使って減らすのです。愛護センターへ業者から持ち込まれる犬はこんな事情で命の終焉を迎えるのです。一部は新しい家族が見つかる幸運な子もいますが、山奥に遺棄・薬で処分・食事を与えずに餓死・研究施設へ売却・撲殺して焼却。過去に悪徳業者が行ってきた”効率化”の方法です。