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レポート:動物愛護法の見直しに向けて

by ころく on 2011年11月29日

 

 

2010年12月に参加した一般社団法人 日本動物虐待防止協会(Nippon SPCA)さん主催のセミナーのレポートをしたいと思います。
 

「一般社団法人 日本動物虐待防止協会主催セミナーに参加して」

流通・販売システムに関する知識を持つ方や動物取扱業者として生体販売の経験を持つ方など、様々な分野における有識者4名をパネリストに迎えたセミナーで、各パネリストの方がそれぞれのテーマに沿って情報提供してくださりました。ここですべてを紹介することはできないので、私が印象に残った点・興味を持った点に絞って紹介していきたいと思います。
 
なお、今回のコラムでは4つのトークテーマのうち①つ目と②つ目(何故、殺処分が起きるのかペットの流通の問題)について書きたいと思います。次回のコラムではトークテーマ③つ目と④つ目を、そしてセミナーの最後で出された“ペットの競り市を動物取扱業者に入れるか否か”、この点に関してその次のコラムで書きたいと思います。
 

①トークテーマ:何故、殺処分が起きるのか

パネリストの成田司さんは、ペットを売る側も飼い主も共にモラルが不足していること点を指摘し、また「消費者に対して店員さんが強く言えない」とお話していました。この点について、保有する情報量の観点から書きたいと思います。なお、成田さんはsomodeと協働でティアハイム建設を行っています。
 
ペットショップで犬を買おうとするとき、何を基準に選びますか?現在、法律では「事前説明制度」が設けられていますが、これは購入時の情報提供です。大部分の人は、事前説明を受ける前に購入を決めているのではないでしょうか(これに関しては他のコラムで説明したいと思います。)
 
ペットは一般的に購入頻度が低いものです。かつ、購入してしばらくしないと品質がわからないという「経験財」です。現在、広いスペースに数匹のワンちゃんを放しているペットショップも多くみられ、消費者も他の犬との関わり方を見て、「あの子は弱虫タイプかな」とか「あの子はフレンドリーなワンちゃんだ」とかの推測はできるようにはなってきました。また、販売するワンちゃんがいるところにはその犬に関する情報が掲示されています。
 
このようにさまざまな情報を私たちは得ることはできますが、情報量という観点からみれば、消費者と毎日ワンちゃんの様子を見ているペットショップさん、どちらが多いかは言うまでもありませんね。余談ですが、家電の系列下ということを聞いたことがある方もいらっしゃると思いますが、なぜ系列化したのかというと、当時、家電は普及していなかったため、ただ単に売るのではなくその製品の使い方を説明する必要があったという背景があります。
 
つまり、消費者が商品知識に乏しい商品の場合は、商品だけではなく「商品+情報」を提供する必要が出てきます。ペットは飼ってみないとわからないという不確実性の高い商品です。そして、一般的な商品とは異なり、同じ「チワワ」といっても性格も見た目も異なり、同じものはありません。(法律でいう特定物か不特定物かという議論にもつながるところですがここでは省略します)ライフスタイルと合わない、理想と違う・・・飼ってみてから「違う」と気付いても遅いのです。
 
マーケティングの分野に「顧客経験価値」という考え方があります。簡単に言うと、品質や機能といった商品そのものの価値ではなく、購入や使用する過程(消費過程)の経験から得られる価値のことをさします。自動車を例にあげれば、自動車を購入するときは価格や広さ・燃費などの性能以外にも、見た目や乗り心地というものも大切な条件になると思います。車という商品を買っているのではなく、車を選ぶときの喜びや車を乗った時の心地よさ、いわゆる高級車であればその車を保有することで得られる優越感というものを買っている、という風になります。
 
これをペットに置き換えると、ペットそのものではなくペットと過ごす時間を買っていといえるのではないでしょうか。“欲しい!飼いたい!”というだけでなく、“この子と過ごしたらどうなるのかな”と考えてみてください。その時、楽しい場面だけでなく、自分の生活スタイルや住環境、金銭面などの現実を考え判断する必要があります。そして、少しでも不安を持ったら飼わないという選択をすることも時には求められるでしょう。たくさん質問をして、教えてもらいましょう。
 
これは譲渡でも同じです。新しい命を救うことはとても大事なことです。しかし、譲渡会に行った→欲しくなったから飼いはじめた、では衝動買いと同じではないでしょうか。面倒をみている方にたくさん質問をしていろいろ教えてもらいましょう。お店の方もたくさん質問してくるでしょう。
 
この質問のやり取りが重要です。お店の方も、「本当に大切に飼ってもらえるかな」と不安です。質問のやり取りを通して、お店も消費者もそれぞれが持っている不安を解消することで、HAPPYなペットとの生活が得られると考えます。
 

②トークテーマ:ペットの流通の問題

太田 匡彦さんは法律の見直しにおける中心的テーマともいえる幼齢動物の販売、いわゆる“8週齢規制”を、産業内の利害関係も含め、業界関係者への取材を通して得たさまざまな立場における意見をお話してくださいました。太田さんはこれまでにAERAでペットの問題に関する記事を書いており、『犬を殺すのは誰か ペット流通の闇』というタイトルで本を出版されています。
 
8週齢規制に関しては産業内でも議論は分かれるところです。ころくがこれまでに行ったペット業者さんへのインタビュー調査でも賛否両論でしたが、産業内でもこの8週齢規制に関する問題は強く認識されているという印象は受けました。
 
この問題が難しい点は「消費者のニーズに対応する」という経営の論理が通用しないということです。「一般の飼い主のニーズを把握しているのか」と反論されたとお話されていましたが、消費者のニーズは徐々に変わりつつあるとはいえ、未だ子犬にあるといえるでしょう。そもそもペットショップが子犬を販売するから子犬を買うのか、あるいは子犬を欲しがるからペットショップが子犬を販売するようになったのかは定かではありませんが、いずれにせよ、消費者の子犬に対する高いニーズは存在しています。
 
つまり、この問題の根底にあるものは、そもそも「消費者が子犬をほしがる」ということなのです。幼齢動物販売問題への解決策の一つとして、子犬に対する高いニーズをどう変えていくか考える必要があるのではないでしょうか。そうでなければ、たとえ規制したとしても、幼齢動物の販売はなくならないでしょう。

 
 
今回のコラムでは2つのトークテーマに沿い、レポートしました。次回のコラムでは、トークテーマ③動物愛護法の問題点、トークテーマ④私たちにできることについて書きたいと思います。



ころく

これまでペット産業に関する研究を行い、多くの論文を発表してきた。特にペット産業の中でも生体(犬)の流通・販売システム、犬の譲渡活動に関心を寄せ、実証的な研究を進めている。

小学校の時に段ボールに捨てられていたワンちゃんを拾ったこと、高校生の時に前の飼い主さんが引っ越しで飼いきれなくなったワンちゃんを引き取ったことが今の研究の原点。将来は大きい家で沢山のワンちゃんと幸せな生活ができる事を夢見ている。

時々、Clubにも顔を出しマリブパインを飲みながらフロアの音を楽しんでいる。