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トランス界の貴公子Armin Van BuurenのBlue Fearについて

by 一梨乃みなぎ on 2012年1月18日

 

 
『追憶のBlue Fear』

 Armin Van Buuren、1976年、オランダ・ライデン生まれのDJ……TranceのDJ、プロデューサー、トラックメイカーと言えば、まず彼の名前を出さないわけにはいきませんね。
 昨年、DJ Magazine主催の世界中のDJの人気投票的なランキング「DJ MAG Top 100」にて5連覇のかかっていたArmin Van Buurenでしたが、結果は惜しくも2位、その1位の座をとうとう明け渡すことになってしまいました。

 しかし、2007年からの4年連続1位という功績は圧巻、世界ナンバーワンと言っても問題ないでしょう。
 今日は、そんな彼のキャリア初期の楽曲を紹介したいと思います。

Armin / Blue Fear(Original Extended Version)[Cyber Records 1997]

 97年に地元オランダのCyber RecordsからリリースされたこのBlue Fearと言う楽曲は、Armin Van Buurenがまだ19歳(!)だった時に作られた作品です。

 当時まだ20歳そこそこで、売出し中だった彼はこの曲のヒットが、スターダムを駆け上がるきっかけになりました。

 Blue Fearは最初のリリース後、ChicaneやArscapeなどが所属するイギリスのレーベル、Xtravaganzaにライセンスされスグにイギリス国内で続発リリースされました。

 さらにXtravaganzaではBlue FearのRemix版として、後にSweet Releaseなどのヒットで知られるTrouser EnthusiastsのRemixを収録し再リリースされたことも、この曲の当時の話題ぶりを伺わせるリリースといえるでしょう。

Armin / Blue Fear(Trouser Enthusiasts E.B.E Mix)[Extravaganza Recordings 1997]

 Trouser Enthusiasts独特のシンセメロディが追加されたこのバージョンは自分は今でもよく聴いています。

 スマッシュヒットとなったこの曲も、後にXtravaganzaのディールが98年にEdel GermanyからSonyへ変わったことで、ライセンス関係が複雑になり、98年の廃盤以降コンピレーション収録などが殆ど無く、日本でTranceのブームが訪れる頃には「知る人ぞ知る名曲」として扱われてきました。

 ちなみにこのTrauser Enthusiastsのバージョンは今日においても、再リリースやダウンロード配信などが行われておらず、少しカルト的な立場にあります。

 もちろんBlue Fearのオリジナルにおいても、少しライセンス的に面倒な事があったのは確かなようで、同じくコンピレーションアルバムなどの収録がなく、XtravaganzaからリリースされたArmin Van Buurenの楽曲はこの一曲のみとなりました。

 楽曲の権利関係で面倒な事に巻き込まれるのは、新進気鋭トラックメイカーとして必ず通る道なのでしょうか……
(もっとも、レーベルとの関係が悪化したわけではなく、その後の99年に同レーベルからリリースされたAirscape / L’esperanzaにはRemixを提供しています)

 彼はその後Lost Soul SocietyやTouch Me、The Sound of Goodbyeなどのヒットを重ねてゆくうちに、このBlue Fearは過去の1作品として埋もれてゆくかと思われました。

 しかし、このBlue FearはArmin Van Buurenにとって、とても大事な、思い入れのある一曲でした。

 数多くのリミックス・ワークを地道にこなし、トランス専門のネットラジオ「A State of Trance」の配信もスタートし、着実にキャリアを重ねてきた彼は2003年、とうとう待望のアーティスト・アルバムの「76」をリリースに至ります。

 ライブ系のユニットならともかくも、一人のDJ、トラックメイカーとしてアルバムをリリースするのは、当時としてはそれ相応のキャリア、実力が必要でしたからまさに「満を持して」という表現がぴったりかもしれません。

 彼のファンでもあった自分は、当時アルバムの収録曲に「どんな楽曲が収録されるのだろう?!」とワクワクしながら、彼の所属していたUnited Recordingsのサイトをチェックしていたのを覚えています。

 そのアルバム「76」には、なんと、彼のキャリア初期の楽曲 Blue Fear が、彼自身の手によってお色直しされて収録されていたのです。

Armin Van Buuren / Blue Fear 2003 [United Recordings 2003]

 アルバム76には同じく過去のリリースから Communication が収録されましたが、こちらはリリースされた99年当時の音をリマスターした形だったのに対し、Blue Fearは完全に作り直され、アルバムからのカッティングチューンとして、12インチシングルもリリースされました。

 当時 North Pole や Sahara のヒットで一躍話題になっていたSolid Globeや、Holding on to Nothingのリリースなどで交流のあった Agnelli&Nelson らがRemixを担当し収録されています。

Armin Van Buuren / Blue Fear(Solid Globe Remix) [United Recordings 2004]

 突き進むような曲展開に、バウンシーなリズムトラックはSolid Globeのお家芸と言うところでしょうか。

 Solid Globeのプロジェクトメンバー Raz Nitzan はその後もArmin Van Buurenの片腕として、後のリリースである Shivers(Birth of An Angel)などの楽曲制作の裏方としてクレジットに顔を見せています。

 アルバム「76」のリリース後の2004年、Armin Van Buurenは United Recordingsから独立し、自身のレーベル Armada を設立。その後の彼の破竹の勢いは、知っての通りということでここでは割愛します。

 レーベル名の「Armada」とは彼自身の名前「Armin」のスペルのモジりもそうですが「アルマダの海戦」がレーベル名のそのルーツになっています。

 アルマダの海戦とは16世紀に、イングランドとネーデルランド(現オランダ、オランダを表す「ネザーランド」の語源名)がスペインの「無敵艦隊」を破った海戦のことで、当時小さな小国だったオランダが、世界を股に掛けて植民地を持っていたスペインを破ったのは、オランダ国民にとってセンセーショナルな出来事でした。

 彼の出身地ライデンがオランダの港町であり、アルマダの海戦の頃、一番都市として栄え、オランダ黄金時代の一翼を担ったという思いから「アルマダ」と名付けられたと言われています。

 2005年にリリースされ、その年初めて開催された彼のDJライブイベント「Armin Only」の1曲目にプレイされた「Sail」にはそんな大航海時代を思わせる彼の野心が込められています。

Armin Van Buuren / Sail(Live at Armin Only 2005) [Armada 2005]

 クラシカルな帆船に見立てられた彼のステージは、オランダ発のクラブミュージック「ダッチトランス」が世界を席巻する、クラブミュージックシーンの「アルマダの海戦」の再現……まさにそんなメッセージを含んでいるといえるでしょう。

 Blue FearのライセンスもArmin自身(Armada)が保持し、彼のステージやラジオでも時折クラシックチューンとしてプレイされ、昨年にはArmadaに所属するトラックメイカーOrjan NilsenによるRemixがリリースされました。

Armin Van Buuren / Blue Fear (Orjan Nilsen Remix)

 Armadaのレーベル設立後、Armin Van Buurenは多くのアーティストたちを発掘してきました。
 Orjan Nilsenもその一人で、Armin Van Buurenにとって思い入れの深い、彼自身もリメイクしたBlue Fearを彼に委ねたのは、Armadaの「若手に自分のRemixを通してチャンスを与える」という方針もあるのかもしれません。

 この楽曲は2011年に再リリースされたアルバムMirageに収録されています、最初にリリースされたCyber Records盤から15年目のリリースです。

 こうしてArmin Van Buurenのキャリアと共に歩んできた楽曲と言える「Blue Fear」
 彼自身もかつてのインタビューで「今までリリースした楽曲で、一番好きな曲は?」の質問に「Blue Fear」と答えており(ちなみに同時にThe Sound of Goodbyeも挙げていました)ひょっとしたらこれからもこのメロディはクラブシーンに轟き続けるかもしれません。

 そんな彼の思い入れを物語るエピソードがあります……かつて、彼のサイトのプロフィールには「好きな色」という項目があり、そこには「Blue Fear!!!!」と書いてあったのですから!(笑)
 
 
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一梨乃みなぎ

萌え系イラストレーター兼、ゆるレコードコレクター。
アニソンや電波ソングを横目にディープなクラブミュージック大好き。
主に90年代序盤あたりから4つ打ち系の踊れそうな音楽を追いかけるうちに部屋がCDとレコードまみれに。

好きなアーティストはSolarstone
同人サークル「ビテイコツハンター」所属
http://cocoon.selfish.be

@Minagi_Ichirino