「現在、そこにある問題に、全力を。」 Last One Mile Project

Written by somode 5月 29th, 2012

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「現在、そこにある問題に、全力を。」

Last One Mile Project

 

 

石巻市雄勝町。

漁業と硯で有名な、海と山に囲まれた穏やかな町。

4000人の人口は震災後に人口流出が続き、現在は約1000人にまで減少しています(死者・行方不明の方は236人)。

 

Last One Mile Project(通称LOM)は、震災以後この町の支援を継続的に行っている学生主体の団体です。現地のニーズに即した週末派遣を継続的に繰り返し、述べ400人がこのプロジェクトのもとでボランティア活動に参加しました。

 

震災後に仲間内へ呼びかけ、8人でレンタカー1台に乗り込み、東北に向かったことから始まったこのプロジェクト。その発起人の立石亮さんにお話を伺いました。

インタビューの中で印象深い言葉がいくつも出てきたので、それをもとに、彼とLOMの歩みを追っていきたいと思います。

 

 

「『僕ら、なんでもやります!』を続ける」

被災地の状況を目にし、「この地域にもっと人を送ろう」と考えた彼らが、東京から2回目に訪れた場所が雄勝町でした。

 

雄勝は硯の名産地。雄勝硯は伝統工芸品に指定されていて、国内シェアはなんと90%を占めています!

また、漁業が盛んで、特にホタテ、銀鮭、カキ、ホヤ、ワカメなどの養殖業が有名です。

地域内の交流が密で、住民同士のおすそ分けで家庭の食事がだいたい賄えてしまうほどだとか!

 

しかし、海と山に囲まれていて外部との交通手段が限られること、2005年に石巻市と合併したため意思決定を市に仰ぐ必要があったことから、震災後、通信機器が機能しない状況下、雄勝町の人々が何を必要としているのか、何に困っているのかというニーズに迅速に対応できない状況が生まれてしまいました。

 

例えば、物資支援でカップラーメンが大量に届きましたが、長期間継続して食べるには子供・高齢者にとって塩分の取りすぎが危惧されました。

そのため、現場では健康上の配慮から、支援物資を活かしきれず、本当に欲しいものが届かない状況が生まれてしまったとのことです。

 

こうした状況を目の当たりにした立石さんたちは、

「行かないと何が求められているのかわからない」

「雄勝町の人が必要としていること“だけ”をしよう」

「なんでも屋を一つの地域で続けていくことが大事」

と考えたそうです。

 

雄勝町の現場で奔走するトモノテ代表の中川千鶴さん(今では住民票を雄勝町に移されています!)と知り合う機会もあり、中川さんと連携し、現場のニーズとボランティアを週末派遣で結び付ける「Last one mile project」が、こうして立ち上がりました。

 

以後そのボランティア活動は参加者の輪を広げながら、ホタテ工場清掃作業、海水浴場の清掃作業、蕎麦屋再開支援、硯石回収作業など、多岐に渡って活動を行っていきます。LOMのHPに詳細の活動レポートが載っています。現場での工夫や学び、気づき、現地の方との触れ合いなどが等身大で書かれていますので、是非ご覧になってみてください。

様々な活動内容→→ http://lastonemile.net/category/report/

 

下の写真は、お盆行事の灯篭流しのため、町民と共に作った灯篭。

 

 

 

「『被災者』も『被災地』も一瞬で終わり、

その次の日から『日常生活』が続いていく」

長く続けてきた週末支援は11月に終了となります。これは、現場の問題がより多様化、複雑化し、現場が直接的な緊急支援の次の段階に入っていたための決断でした。

 

立石さんは阪神淡路大震災を現地で経験され、大好きだった近所の公園の仮設住宅がずっと残っているのを見ていたそうです。

そのため、震災後も日常生活はずっと続いていくし、皆で支え合い続けていくことが大事だということを、彼は子供ながらに肌で感じていました。

そうした経験もあり、自立をゴールとした長期的で継続した支援という考え方が、彼の頭の中にありました。

 

「被災地」という言葉も、「被災者」という言葉も、外からの呼び名です。「被災地」の中でも津波被害や地震被害、原発被害などによって状況は違いますし、「被災者」と言っても避難する人しない人、職のある人ない人、家のある人ない人、子供大人高齢者などがいて、抱える状況や考え方も一人一人違います。

 

共通することは、自立した「日常生活」を送っていかないといけない、ということ。

他人の日常生活の自立をサポートするという、プライベートな難題が表面化していく状況を、立石さんは、

「現地に行けば行くほどわからなくなる」

と言っていました。

 

 

「等身大の一人間同士として互いに向き合う」

4月28日・29日には、外部の人が現地の人と等身大で触れ合う機会として、新宿のLa Keyakiで『石巻 雄勝町 書き続ける道』というカフェイベントが開催されました。

これは「辺境的中心に生きる」という、silent voice有限責任事業組合さんの連続シリーズイベントの共同企画として、株式会社ラミュゼさんからLa Keyakiという文化交流ハウスの提供を受けて3団体で開催されたイベントです。

私もプライベートで参加していたのですが、そこでは雄勝の人との座談会や書道ワークショップ、雄勝のご飯を食べながら語り部さんによる雄勝語りを聴くなど、楽しく濃密な体験・交流の場となりました。

ラケヤキカフェイベント→→ http://lastonemile.net/news/ogatsu_cafe/

 

そこでの座談会で、現地の声を拾うスポークスマンの存在が必要、という意見が出ていました。現場で直接活動をする人の他に、その声を汲み取って国内や国外に発信する人が圧倒的に足りていないとのことです。週末市民記者でもいいし、現地で活動する人と電話なりskypeなりで話して、東京から発信するなどでも十分すぎるほどに役にたつ、とのことでした。

 

 

「なにごとも自然な状態であるべき」

実はイベントの最後に、先日結婚した立石くんと彼の奥さんにサプライズで雄勝の方から硯のお皿のプレゼントあったんです!

 

「結婚おめでとう。今までありがとう。本当に感謝してもしきれません。あなたたちのおかげで、どれだけ前に進むことができたか。」

雄勝の方々が全員前に出て、二人に深々とお辞儀をして。それはただただ純粋な感謝の現れにうつりました。

「奥さん!立石君があなたと一緒にいるべき、大事な時間を私たちが奪ってしまってすみません!大変申し訳ありませんでした!」

と、奥さんに向かって全員で土下座もしていましたw

 

場内爆笑、立石さんも照れるだかデレるだかで顔真っ赤w

 

立石さんは、彼の信条として「なにごとも自然な状態であるべき」と言っていました。

場内が冷やかしと感謝と笑いで包まれたこの瞬間は、ボランティアの自然な形が現れていたように思います。

 

誰にでも共感できる、自然な人間関係を表しているだけ。

人と人との出会い。これは日常生活と同じ。

気のあう人もいれば、気の合わない人もいる。

気の合う人が困っていたら、何かできないかと考える。

助けてくれたら嬉しい。

 

ただそれだけのことなのかもなあ、と静かに感動してしまいました。

 

 

「しがらむ」ことと「信頼の連鎖」

彼の言葉をもう1つ紹介します。

「不信ベースで成り立っている今の世の中だから、どんどん他人におせっかいをし、しがらんでいくべき」

これを以下の例で説明してくれました。

 

隣に住んでいるおばさんが、自分の家の鉢植えに知らないうちに水にやってくれた。

それを、

「知らない人が得体のしれない水を自分の所有物に混入した、勝手に!怖い!」

と思うか、

「親切な隣人が、こっそり水をやってくれた。感謝!お礼にいかなきゃ。」

と思うか。

 

両方正当な解釈ですし、前者のように「不信ベース」の考えによるリスク管理は大事ですよね。

彼の言葉を借りれば、この前提のもとで金利や契約などの仕組みが生まれ、今の世の中が形作られています。

 

ただ、後者の「信頼ベース」の感覚は、人と人とを繋ぎ、感謝がさらなる信頼を生み、出会いを促し、信頼の連鎖を生んでいきます。

 

彼は、震災後に現地に向かう際、「ついてきてくれそうな人に声をかけた」と言っていましたが、現にそのほとんどの人が話にのり、その信頼ベースのもとに400人をまきこんで東京や他の地域の人間と雄勝を結ぶプロジェクトに発展しました。

 

もちろん人を無条件に信じることはリスクが大きいと思いますが、普段から、他人におせっかいをしていく、しがらんでみる、それに信頼して応えてみる、という小さな一つ一つの気持ちと行動が、百にも万にもなる可能性を秘めているのかもしれませんね。

 

 

「LOMより、雄勝を知ってほしい」

LOMの宣伝の申し出に対する彼の答えです。

 

知る。

現地の人と触れ合う。

求めていることを把握する。

自分にできることをする。

 

この単純なステップを貫いている彼にとって、LOMはひとつの手段。メンバーもそういう気持ちで動いているからこそ、結果としてLOMの組織を形作り、行動を促進させているのかもしれません。

 

今後、LOMは雄勝と東京を結ぶカフェイベントや、雄勝の物産展を継続していく予定とのことです。是非、活動の様子や商品をご覧いただき、頭の中で雄勝を想像してみてください。

それで何か頭に浮かぶことがあれば、その単語をググったり、twitterで検索をかけるなり、何か近い活動に関わっている友達のfacebookを覗くなりしてみてください。意外と身近に感じられる接点ががあったりするかもしれませんね!

(商品だと、個人的には硯の扇形菓子置きが渋くていい感じと思っています!)

 

Last One Mile Project →→ http://lastonemile.net/

 

Writer: 五藤真(Gentle Mickey)

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